スクリーンに新刊書籍から抜粋したと思しきアロハシャツや昔のハワイの様子などの写真を投影して話が進む。
<浴衣アロハ>
スクリーンに投影され、説明されたのが、一枚のモノクロ写真。
大型船の甲板に立つ女性の写真だ。
女性はアロハシャツを着ているが、そのシャツのプリントは、
一目でわかる浴衣らしい、大柄な花の模様だった。
私はアロハシャツについての知識はあまりないのだが、
ハワイで日系人の使っていた浴衣の生地をシャツにしたのが始まり、という話はかろうじて知っていた。しかし、こうやって浴衣生地とわかるアロハを着た人の古い写真を見ると、
アロハシャツの歴史に一気に引き込まれるようだった。
<何気ないイラストに描かれた日常風景>
ぱっと見では、何気ないプリントと思うような柄には、デザイナーが込めたハワイの日常が隠されていた。
デール氏が紹介したのは、あるデザイナーのデザインした古いアロハシャツ。
ダイヤモンドヘッドと思しき山と海、ハワイの伝統家屋の前で踊る人々、ボートの縁に腰掛ける女性とボーイフレンド。
私には、最初、一見よくあるアロハシャツの柄としか映らなかった。
デール氏は、このデザイナーにその製作の様子を聞き取ったようだ。
このデザイナーは日々目にする風景や写真をもとにシャツのデザインを書き上げた。
ダイヤモンドヘッドや踊る人々はデザイナーの目にする日常そのものだったのだ。
ボートの縁に腰掛けるカップルは、ある雑誌写真がもとになっていた。
デール氏が紹介した、その元になったモノクロ写真を見ると、構図が同じである。
写真に写るカップルの談笑する空気感がそのままアロハシャツに吸い込まれたようだ。
もう一つのアロハシャツには、レイと大型船からタラップで降りる人々のパターンがプリントされている。
当時、アメリカ西海岸からバケーションにやってくる人々が大型船でハワイに寄港する様子を描いたものだ。レイを持って客船を出迎える人々。
デール氏は当時の客船や出迎え風景の写真を同時に見せて説明してくれた。
なに気ない(と今は思ってしまう)デザインに、その当時の現実風景が込められているとわかると、そのシャツは全く違ったものに見えてくる。
当時のハワイの空気感や客船を迎える熱狂が伝わって来るようで、アロハシャツの見方が少し変わった気がする。
<日本的波の描き方>
デール氏の説明の中で、おもしろいエピソードがあった。
アロハシャツ発展の初期、アロハ生地は日本の生地メーカーに発注していたそうだ。
生地を日本のメーカーに注文する際に、デザインの元となる雑誌生地の切り抜きなどを日本に送り、出来上がりイメージを伝えていた。
あるビンテージアロハシャツが紹介された。
それは日本に発注した生地で作られたシャツだった。
山、海、ボードなどハワイの風景が描かれたアロハシャツ。
日本の生地職人が、まだ見ぬハワイの風景を写真で想像しつつ、作った生地なのだそうだ。
なるほど、波のブレイクする様子が、まさに富嶽三十六景を彷彿とさせる、ジャパニーズスタイルなのだ。
日本的波が描かれたハワイのビンテージアロハ。
コレクターでもない私でも、興味深く、奥深いアロハシャツの一端を垣間見させてもらった。